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  • mune

子どもの育ちに本当に必要なもの


社会的養育の世界に足を踏み入れてから随分長い年月が経ちました。


私が施設で働き始めて間もない頃は、幼稚園児から中学生まで12~13人ほどの2つのグループ(25人ほど)を一人でみないといけないような時間帯(特に平日の朝)もありました。


当時の私からすれば、現在の職員配置は十分すぎるくらいだと思うのですが、現場職員からは「まだ足りない」という声も聞こえてきます。

たぶん、どこまでいっても「足りない」という声は消えないのでしょう。


以前は、里親委託のケースは、今ほど多くありませんでしたが、たまに里親に行けるようなケースがあると皆が「よかったねぇ…」と喜びの涙で送り出していました。

それは、施設では十分なケアができないと誰もが思っていたからです。



ただ時が過ぎ、職員配置が激増し、家庭的な環境が整い、施設でのケアの質が良くなってくると、「わざわざ里親に行かなくても良いんじゃないか?」と訴える人が現れるようになりました。


施設(特に児童養護施設)が里親不調により傷ついた子どもを受け入れる場所になっているということもあり、現場職員が里親委託の意義を感じにくくなっていることも併せて、思った以上に里親委託が進まないという側面もあります。


ただ、どれだけ施設のケアが良くなっても、施設であることの本質は何も変わりません。


施設というのは、あくまでも仕事で子育てする場所であり、職員は勤務時間が過ぎたら自分の家に帰り、そこでリラックスしています。


いっぽう家庭というのは、仕事から解放された大人が子育てをするところで、一番リラックスできる場所で子育てをしています。


この違いは本当に大きいと思いますが、では家庭で子育てすればそれでいいのかというとそうとも言えません。


「いい子にしていないと施設(児相)に戻されるかもしれない。」そんな不安を抱えながら里親家庭で生活している子どもがいることも事実です。


里親委託を推し進めるのであれば、この事実にどのように向き合っていくのか。

どうあるべきか。

何をすべきか。


これは、社会的養育に関わる全ての人に問われている問題だと思っていますし、施設か里親かではなく、『子どもの育ちに本当に必要なもの』を真摯に伝えていくことが、私たちフォスタリング機関の役割でもあるように感じています。

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