困った行動の裏側② 本当の相手に出会うこと
- miyamoto
- 7月15日
- 読了時間: 5分

前回のブログでは、投影同一化という言葉を使って、困った行動の背景を想像してみました(投影同一化については前回のブログ『困った行動の裏側①相手に映し出された心』をご参照ください)。今回はその続きで、投影同一化が起きている関係ではどのように関わるのが良いか、という内容になります。
自分の気持ちを自分のものとして感じられるようになれば、投影同一化の必要がなくなるはずです。ですが「これはあなたの気持ちですよ」と言ったところで、相手はより行動が激しくなるか、それとは反対に引きこもったり、気持ちを麻痺させるための別の行動をとらざるを得なくなったりします。
ポイントは、苦痛だからこそ映し出していて、映し出した気持ちを“相手だと錯覚している”(自分が投影した気持ちに相手を同一化して見ている)ということです。なので、映し出された側が同一化せずにいることが大切です。
【心地良い感覚を増やす】
心地良さを感じることは生活の中にたくさんあります。例えば、温かい布団で眠ること。清潔な服を着られること。朝起きたら笑顔で「おはよう」と言ってもらえること。帰ってきたら「おかえり」と出迎えてもらえること。温かい食事があり、温かい雰囲気の食卓があること。自分という存在が歓迎されていると感じられる関りです。
子どもにとって、心地良さを提供してくれる相手は良い対象です。まずは良い対象であることを知ってもらう必要がありますので、そのような関りを増やしたり、環境を整えたりしましょう。
【苦痛な気持ち一旦を預かる】
心地良い感覚を増やそう!と言われても、実際に行動をぶつけられている最中に心地よい関りを提供することは難しいです。困った行動や傷つくような言葉を受ける時は、誰だって苦痛です。そういう時はその苦痛を「相手の気持ちを“預かっている”」と意識してみてください。
「相手が抱えきれない気持ちをこちらに投げ込んでいるのかもしれない」
「自分のこの気持ちは相手が抱えている苦しさでもあるのかもしれない」
そのように意識しておくと、少しだけ持ち堪えることができるのではないでしょうか。子どもにとって(大人でもそうですが)自分で抱えきれない気持ちは、飲めば命を落としてしまうほどの猛毒や、いつ爆発するか分からない爆弾のように危険なものとして無意識に感じられているのだと思います。猛毒や爆弾なら、飲み込めないのも抱えられないのも当然ですよね。それを大人が一度受け止め、代わりに持ち続けて、持ち堪えてくれていると、子どもは「あれ?持っていても危なくないのかな?」「本当は猛毒じゃないのかも?」「爆弾じゃないのかも?」と思い始めることができます。
そうした上で、大人が子どもの気持ちを噛み砕いて、子どもが飲み込みやすい形にして返してあげると、子どもは少しずつ自分の気持ちとして感じることができるようになっていくかもしれません。猛毒だと思っていたものが実は苦い薬で、爆弾だと思っていたものが実は風船だったと体験的に分かるかもしれません(それでも私は苦い薬は苦手だし、風船の爆発する音は怖いのですが・・・)。
【持ち堪える工夫】
持ち堪えることが大切なのは分かるけれどそれでも難しい。その様な時は、その場でできる気持ちが落ち着く方法を何でも良いので身に着けることが役に立ちます。その際は、イライラを0にする方法ではなく、イライラ度100%が80%だったり70%だったりと、少しでも良いので軽減する方法を身に着けるのが大切です。そして100%あったイライラが80%になったぞ、と気づいておくことで、これをしたら気持ちが落ち着くということを身体が体験的に学習し、効果を発揮しやすくなります。不思議なことに、イライラしても気持ちを落ち着けたという体験は、イライラに持ちこたえやすくしてくれるのです。
ちなみに私が感情の波に流されそうな時は、船の“錨(怒り)”を海に“沈める”イメージをします。錨が胸の辺りから体の下の方向にどんどん沈んでいくイメージをしながら、ゆっくり長く息を吐くように呼吸します。そうすると少しだけ気持ちが安定するような気がして、冷静さを取り戻します。
子どもから映し出された気持ちに壊されることなく、ある程度自分らしく対応できること。そうすることで子どもは、“映し出した気持ち”をあなただと錯覚していた状態から、映し出された気持ちに持ち堪えてくれているし、心地良い関りも提供してくれる“本当のあなた”と出会うことができるのだと思います。
【最後に】
投影同一化に気づくというのは中々難しいです。実は心理療法(カウンセリング含む)の関係でも起こることなのですが、心理士も巻き込まれます。何とか対応するために理論を勉強したり、色々な方法を学んだりしているわけですが、最も役に立つのは、スーパービジョンを受けることだと言われています。スーパービジョンというのは、第三者の守秘義務のあるベテランの心理士に、心理療法で起きていることを相談して助言・指導を受けることを言います。岡目八目という言葉がありますが、現場から離れた位置からだと冷静に物事を見ることができるのだと思います。
ほだかの里の心の相談室では、スーパービジョンとまではいきませんが、子どもとの関わりの中で生じてくる気持ちを整理したり、子どもの行動の背景にある心の動きを一緒に考えたりするお手伝いができます。子どもの行動を直接変えることはできませんが、生活の場から少し離れたところで自分の気持ちを整理すると、子どもの心を考えるスペース(心のゆとり)ができます。そして、子どもの心を考えることで子どもへの関りを工夫できるようになり、関わり方が変わることで子どもとの関係が変化していきます。地道な作業にはなりますが、話してみようかなとお思いになりましたら、どうぞ遠慮なくご連絡ください。




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