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  • inoue

はなとわたし


結婚してから夫婦2人の生活が長く続きました。

夫婦2人だけの生活も、趣味のキャンプや旅行、ゴルフなどを楽しみ、仕事もしていたので忙しく毎日が過ぎていました。

結婚して6年ほど経ち不妊治療を始めましたが、子どもになかなか恵まれず私達は癒しを求め犬を飼うことにしました。


初めて飼う犬です。それはそれは可愛くて、花のような可愛らしさに「はな」と名前を付けました。

とても愛しく可愛がっていましたが、一緒にいる家族であっても、はなは犬で子どもではありません。子どもが生まれたら、はなと一緒に生活できたら良いな~と、ベビーカーを押しながら、はなの散歩をする姿を夢見ていました。

でも、はなを可愛がる私の姿を見て周りからは「犬が子どもの代わりだね」とか「はなちゃんのママ」なんて言われ、その度に私は、はなのお母さんではないぞ!と思うのでした。


不妊治療は予定以上に長く続き10年近く経っていました。

身体も心も疲れ果て不妊治療を終了し、それでもやはり子育てがしたいという思いで里親登録という道を選び、1年後息子との出会いとなりました。

息子と暮らし始めて数ヶ月が経った頃、はなは病を発症し、亡くなってしまいました。

それは本当に急に訪れたお別れでした。


息子が来てからは慣れない子育てに必死で、はなのお世話までキチンとできていませんでした。

そんな中でお別れになり「ごめんね」と謝ることしかできず涙が止まりません。

そんな私を神妙な面持ちで見つめている息子を抱きながら夫が「今まで一緒に居てくれて感謝しかないよね、ごめんねより、ありがとうだよ」と言ってくれました。


はなは10年間、私たち夫婦にとって家族でした。

妊娠した時の喜びも、流産した時の悲しみも、そして息子との出会いの奇跡も、いつも傍にいてくれました。

きっと、私たち夫婦が子どもを授かったことを喜び、安心してくれたと思います。


いつか虹の橋で会う時には、楽しかった人生色々の話がたくさんできるように…。

その時には、「はなちゃん、お母さんね」って話すと思います。

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