高校生の‟思いがけない妊娠“があり、そこに偶然知り合った児童相談所の職員がかかわり、赤ちゃん縁組(新生児の特別養子縁組)に至るというドラマ「命のバトン」は、まさに人と人とがバトンリレーのようにつながっていくというストーリーだった。
ドラマを観ながら、十数年ほど前に中学生の‟思いがけない妊娠“を当時、児童福祉司として担当した時のことを思い出し、いろいろ考えさせられるきっかけとなった。その時は、最終的に実母の母親が中心となって自宅で子どもを育てることになり、乳児院入所や里親委託、養子縁組には至らず、子どもは家族の中で成長していった。ただ、当時中学生だった実母はその母親との関係から家出を繰り返し、落ち着かない生活を送っていた。全てがうまくいくことばかりではない現実を突きつけられた。
数年ほど前には、再び中学生の‟思いがけない妊娠“を里親担当職員としてかかわり、赤ちゃん縁組(新生児の特別養子縁組)として子どもを養子縁組里親に委託した。現在、特別養子縁組も成立して、子どもは里親さんに愛され、家族の中で健やかに育っている。ただ、中学生だった実母は自宅に落ち着くことはなく、何回か家出をし、その都度一時保護されていた。またも厳しい現実を見せつけられ、うまくいくことばかりではないことを実感した。
そんな二人の‟思いがけない妊娠“から展開する実母の現実を目の当たりにしてきたから、ドラマを観終わった後も、素直にハッピーな気持ちになれず、その後、高校生の「結」はどうなっていったのだろうかと委託された子どもの行く末よりも産んだ実親のことが気になってしまう。思いがけない妊娠から子どもを産むことの現実と子どもを産んだ実親の背景を考えると、実親の抱えている課題に触れざるを得ないと思う。そこに目を向け、実親に向き合ってこそ子どもや里親を支えることになるのではないかと。
子どもを守ることと同様に実親をどう支えていくのか、課題は多く、現実は厳しいことを改めて考えさせられた。
その後、中学生だった母は、成長し、中学生となった一人息子と一緒に暮らしていると風の便りに聞いた。もう一人の中学生だった実母は得意だった美術関係の道を歩き始めたという。
さて、ドラマの中の高校生だった「結」はその後どうなっていくのか気になる。「結」が出産や、子どもを赤ちゃん縁組したという事実をどう受けとめ成長していくのか、子どもを手放したという悲しみや喪失感、罪悪感をどう乗り越えて産みの親として子どもに向き合えるのか、「命のバトン」続編を観てみたい気持ちになる。
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