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kamiya

選択的夫婦別姓について考える




最近話題になっている選択的夫婦別姓制度とは、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の姓(氏、名字)を名乗ることを認める制度。現在の民法では、結婚に際して、男性又は女性のいずれか一方が必ず氏(名字)を改めなければならず、そして現状では男性の氏を選び、女性が氏を改める例が圧倒的多数となっている。

 夫婦が同じ氏を名乗るという慣行が定着したのは明治時代からだといわれ、明治31年に施行された戦前の民法では、戸主と家族は家の氏を名乗ることとされた結果、夫婦は同じ氏を称するという制度が採用された。明治時代より前は、そもそも庶民には氏を名乗ることは許されていなかったという。

第二次世界大戦後の昭和22年に施行された民法では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する。」とされ、これが現在の制度となっている。


 現在、男女が結婚する時は、全ての夫婦は同じ氏を名乗らなければならないことになっている。選択的夫婦別姓制度とは、夫婦は同じ氏を名乗るという現在の制度に加えて、希望する夫婦が結婚後にそれぞれの結婚前の氏を名乗ることを認めるというもの。

 もちろん、選択的な制度なので全ての夫婦が別々の氏を名乗らなければならないわけではなく、これまで通り夫婦が同じ氏を名乗ることもできるし、別々の氏を名乗ることを希望した場合には別々の氏を名乗ることもできるようにしようとする制度です。

 選択的夫婦別姓制度の導入に賛成する意見では、氏を変更することによって生じる現実の不利益があること、氏を含む氏名が個人のアイデンティティに関わるものであること、夫婦同姓を強制することが婚姻の障害となっている可能性があること、などを理由とするものがある。

 他方で、選択的夫婦別姓制度の導入に反対する意見には、例えば、夫婦同姓が日本社会に定着した制度であること、氏は個人の自由の問題ではなく公的制度の問題であること、家族が同性となることで夫婦・家族の一体感が生まれ、子どもの利益にも資すること、などがあげられている。


 振り返ってみると、自分自身が結婚した時には夫婦が同じ氏を名乗ることは当たり前のことと思っていて、結婚相手(妻)が自分(夫)の氏に変更することに何のためらいや疑問も持たなかったというのが正直な気持ちでした。当時は、まだまだ家父長的な家族観が自分の中に刷り込まれていたのかもしれないと最近になって思い直しているところです。

 一方、妻の方も当時は自分の慣れ親しんだ氏が変わることについて、やはり疑問やためらいはなかったようで、結婚前に二人で氏について話し合ったこともなく、それは当然のことと受け止めていたというのが事実でした。


 結婚して夫婦のどちらかが氏を変更しなければならないということを考えるきっかけとなったのは、次男の結婚でした。三人兄妹の中で一番先に結婚したのは次男でしたが、結婚と同時に相手の両親と養子縁組をしたいと話があったことから、改めて家や家族について考えるようになる。そして、そのきっかけとなったのは、次男の結婚式の披露宴でのエピソードでした。

 次男から養子の話を聞いた時、父親である自分と母親の妻は別に驚くこともなく、次男の意向を素直に受け入れたが、妻の母親(次男の祖母)は孫が養子縁組することをよく思っていなかったという。そんな思いがあって、披露宴の席でそれがあらわになってしまった。

 披露宴が順調に進み、歓談の時間となった時、既に酔いが回った祖母がつかつかと新郎新婦の席に向かっていった。そして、酔った勢いから祖母は新婦に向かい「可愛い孫を奪っていって…」と絡み始めた。祖母は、次男が養子になることは相手方の家に入ることだと考え、嫁入りならぬ婿入りすることになると考えたようだった。相手の家の養子になること、その家の氏を名乗ることが気にいらず、許せなかったのだと思う。

 祖母が酔った勢いで新婦に向かって絡み始めた瞬間、まずいことになると予想して、近くにいた身内が咄嗟に止めに入り、自席に引き戻して何とかその場を鎮めることができた。披露宴は一瞬怪しい空気に包まれたが、事なきを得てすぐに賑やかさを取り戻し、何もなかったかのように無事に終了となった。

 次男は結婚し、相手の両親と養子縁組をして氏も変更したが、特段何も変わることはなく、親である私たちや兄妹との関係、付き合いも以前と全く変わらなかった。

 その後、長男が結婚し、最後に長女が結婚した。長女は夫の氏に変更したため、今では私たち夫婦の子どもは3人とも違う氏を名乗っている。事あるごとに家族が我が家に集まるが、氏は違っても何の違和感もなく、以前と変わらずに付き合いは続いている。


 名字(氏)を記号ととらえてこだわりを持たない人も多いと思うが、名字は個人のアイデンティティとしてとらえ、人生の途中で名字(氏)が変わることに強い違和感を持つ人も少なからず存在しているのも現実だと思う。そんな人のためにも選択的夫婦別姓制度は必要なのかもしれない。結婚して夫婦になる時だけではなく、里親家庭や離婚後の親子が氏の問題で悩んでいることの問題解消にもつながるかもしれない。そして、家族の一体感と氏の問題は別次元の課題ではないかと感じている。

 さて、私たち夫婦も結婚以来ずっと同じ姓を名乗ってきているが、長い歴史を経て、だんだんといろんな違いが生じてきている。生活スタイルや価値観、性格の違いや趣味の違いも含め少しずつお互いの溝が広がってきているように思う。

 もしそうであるなら、そろそろ選択的夫婦別姓ならぬ選択的夫婦別生(活)?を始めてみようかなと、ひそかに思いをめぐらせている今日この頃です。

 

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