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困った行動の裏側 ①相手に映し出された心


 里親さんは子どもを養育している中で、子どもの様々な「困った行動」を目にすると思います。どういうことでその行動が起こっているのか、よく分からない時もあるのではないでしょうか。

 今回は心理学の「投影同一化(投影性同一視とも呼ばれるもの)」という言葉を手がかりに、困った行動の背景を考えてみたいと思います。全ての行動に当てはまるわけではないので、こういう考え方もあるんだなぁと、あくまでも参考程度に読んでいただければ幸いです。


 

【大学生時代に出会った“突然の怒り”】

 私が飲食店でアルバイトをしていた頃のことです。新人研修で来ていた中途採用の社員Aさんが、急に「宮本くんもどうせ僕のこと中卒だと思ってバカにしてるんだろ!」と言ってきました。私は食材の仕込みの状況をAさんに確認しただけで、Aさんの学歴については何も知りませんでした。突然の怒りに戸惑いながらも、心の中では「なんだこの人…」と軽蔑の気持ちが湧いてきました。

 このときAさんと私の間に起こっていたのは「投影同一化」というものです。

 


【投影同一化とは?】

 人は自分の心を守るために、無意識のうちにさまざまな“防衛”を使います。それを心理学では心の「防衛機制:Defense mechanism」と言います。防衛機制にはいくつか種類があるのですが、その中でも今回の話に関わるのが次の2つです。

 

  1. 投影

 自分の中の抱えきれない気持ちを、相手がそう思っているかのように認識すること。

 

 例えば、何かに失敗した時のことを思い浮かべてみてください。失敗すると「自分はダメだな」と考えたりします。そうすると、言われてもいないのに「周りの人は私をダメなやつだと思っているのではないか」と考えてしまうことがありますよね。私もよくあります。

 Aさんの事例でいうと、「宮本くんは僕のことをバカにしているのではないか」と“考えているだけ”なら、これは投影です。

 

  1. 投影同一化

 投影した気持ちを相手に押しつけるような働きかけをし、結果として相手の中に本当にその感情を生じさせてしまうこと。

 

 投影と似ていますが、投影と違うのは、相手に対して何かしらの操作(働きかけ)をすることで、実際に相手に何かしらの感情を生じさせてしまう点です。

 例えば、仕事で失敗して「自分はダメだな」と感じるのが苦痛なので、「あの人が悪い」と別の人に責任を転嫁して、その人が悪いと執拗に責めます。そうすると責められた人は、当初は失敗した人を責める気持ちはなかったのに、執拗に責められるものだからムカムカして『いやいや、あなたが悪いでしょ!』と言うようになります。

 

 私がAさんに対して抱いた「なんだこの人…」という感情は、Aさんが投げ込んだものに私が反応して起こった感情でした。そしてAさんは私の反応を見て、「ほら、やっぱりバカにしている」と確信してしまうのです。

 

 

【子どもの困った行動も同じ仕組みで起きているかもしれない】

 傷つきを抱えた子どもとの関りでは、この投影同一化が起こることがよくあります。親子関係の不調が起きている場合も、このような心の動きが親子の間で起こっていることがしばしばみられます。

 例えば、「自分は見捨てられる存在だ」という深い傷つきがある子どもは、その傷つきが意識に上ってくることに耐えらないので、「大人は私を見捨てようとしている」という形に変えて、大人に映し出します(文字通り投影です)。そしてその子どもは、大人に見捨てられないようになりふり構わない行動をしたり、「私を見捨てる悪い大人だ!」と捉えて悪態をついて大人を攻撃したりします。すると大人は「この子に振り回されてしんどい」、「もうこの子と関わりたくない」と感じてしまうことがあります。子どもはその反応を見て、「ほら、この人は見捨てるんだ」と悲しい確信をしてしまうのです。

 


 大人同士のそれほど親しくない間柄で投影同一化が起きている場合には、深入りせずにその人からそっと離れれば事なきを得ますが、子どもとの間で起きている場合には簡単に離れるわけにはいきません。

 それではこのような心を抱えている子どもたちと、どのように関わるのが良いのでしょうか。この続きは次回のブログに書きたいと思います。


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